対談

子どものしたことを褒めるというより、喜んだり感動することが大事──のぶみさん

子どものしたことを褒めるというより、喜んだり感動することが大事:のぶみ先生

2015.10.15

誰かのために描いたらうまくいきだした

対談風景

編集長: のぶみさんが絵本作家になろうと思ったきっかけを教えてください。

のぶみ: 僕は高校の時、いわゆる不良ってやつでした。でも、その後、環境を変えたいと思い、保育士を目指して専門学校に入りました。
その専門学校に好きな女の子がいたのですが、その子が「私、絵本が好き!」と言うのを聞いて、つい「俺、絵本描いているぜ」って嘘をついてしまって。まったく絵を描いてないのに、文房具屋で画材を買って、描いて持っていくことになってしまったのです。
そしたら、意外にもすごく褒められました。褒められることが今まであまりなかったので、「これは一生描いていけるかも!」と思い、描いては彼女に持っていく毎日を繰り返していました。それからもう18年が経っています。ちなみに、「絵本が好き」と言っていた女の子は、現在の僕の妻です。

編集長: とても素敵なお話ですね! 奥様との出会いがのぶみさんの絵本作家になるきっかけなのですね。
絵本を描くときに、大切にしているポリシーはありますか?

のぶみ: 1999年に「おかあさんといっしょ」でデビューして、最初はすごく売れました。でも、その後7年間、まったく売れなくなって。デビュー作以降70冊位までは、全然売れなかったです。
自分自身、それをすごくショックに感じていました。当時、もう結婚をしていて2歳の子どもがいたのですが、この状況に、つい「なんかパパだめだー」と、子どもの前で言ってしまいました。すると、「なにがだめなの?」と子どもが聞くのです。「うまく描けないんだよ」と返すと、「だれか困ったの?」と言われました。
その質問をされた時、よく考えたら自分しか困ってないことに気づきました。「じゃあこれで遊ぼう」と子どもが持ってきたのが、新幹線のおもちゃだったのです。どうせ売れないなら、この子のために描こうかなと思うようになり、出したのが『しんかんくん、うちにくる』です。そこでやっと売れるようになりました。
僕の最初に人気が出た1冊目は奥さんのために描いたものでしたが、次に売れた2冊目は子どものために描いた絵本だったので、誰かのために描くと人気が出るのだと思いました。

編集長: なるほど。

『しんかんくんうちにくる』あかね書房(左)、『おひめさまようちえん』絵本の杜(右)

のぶみ: 絵本の主役は「かんたろう」と「あんちゃん」ですが、これは、自分の子どもの名前です。子どもに「もう1回読んで」と言われない絵本は、出版してはいけないという気持ちで、やっています。

編集長: 絵本の中に、子ども達に伝えたいメッセージを込めたりしますか?

のぶみ: 特にメッセージはないです。「子ども達にメッセージを伝えよう」って、なんか怪しい気がするので。伝えたいことは、そのまま言葉で言えばいいと思います。
実は、今年出版した絵本は、初めて子どもから大人向けに描いて、それは内容を半分半分にしています。半分半分というのは、半分は大人へ、半分は子どもへという構成です。

編集長: 大人へのメッセージがあるのでしょうか?

のぶみ: メッセージというか、例えば『ママがお化けになっちゃった』という今度出版する本は、「この子は私がいなくなっても大丈夫なのかしら?」という、お母さんだったら持っている気持ちを、リアルに体感してもらうための本です。

読み聞かせする時には面白く演じてほしい

読み聞かせ

編集長: 読み聞かせをするときに、なにか気をつけていることはありますか?

のぶみ: 絵本は、面白いかどうかってすごく大事なので、自分で1回読みます。その後に僕は、自分が絵本を読むのに何分かかっているのかを計っています。なぜ時間を計るのかというと、3分半以上かかったら、子どもは読んでくれないからです。だから、僕の描いた絵本は3分半で終わります。1行2行で1ページが終わって、というようにテンポよくしています。
あと、主となる物語と、サイドストーリーみたいなものを用意しています。終盤でそのことに気づくと、「もう1回読んで」と言いたくなりますから。ちょっとふざけたストーリーを、絵の中に入れておきますね。

編集長: それは興味がわきますね。

のぶみ: 読み聞かせする時には、そのままイントネーションを変えないで読んでくださいと言う人もいるのですが、僕は「面白く読んでくれよ!」と思いますね。演じてほしいです。声色もいっぱい変えて、ショーをしてほしいと思っています。
読み聞かせの時は、子どもはこちらを見ていますから、大人も絵本ばかり見ないで、子どもの方を見た方が良いと思います。「ほら、こうなっているよ!」と話しかけたりすると、すごく子どもは喜びます。
あと、僕は読み聞かせを始める前に、ボケを入れるようにしていて、読み始める時に絵本を逆さまに持ったりして、「それじゃ読めないよ!」とツッコミをもらうとか、「始まり始まり~おしまい!」と言ったりして、「終わっちゃうの?!」みたいな反応が来るようにしています。

編集長: 読み聞かせに聞き手側の子ども達も参加してくるということですね。

のぶみ: そんなことをしていると、「読んで読んで!」って来ますね。
僕は教育ということよりも、人を喜ばせて人に優しくするのが一番重要だと思います。それは小さい子でもよくわかっていることなので、読み聞かせをしていると、「汗かいているよ」とタオルを差し出してくれたり気遣ってくれるのです。教育や、メッセージということより、喜ばせることの方が大事だと思っています。

編集長: のぶみさん自身、子育てで気をつけていることはありますか?

のぶみ: 「よく見る」ということじゃないでしょうか。
「あれすごいね」とか「かっこいいね」とか話しかけたりします。褒めるといいと言うけど、僕は褒めることより、親は喜ぶべきだと思うのです。子どものやっていることに感動したりする方が大事ですよ。
あと、叱るのも大事だと言いますが、叱るより悲しんだ方がいいかなと思います。子どもって感情で怒ります。だから感情じゃないと伝わらないと思います。
うちの子が、小5になりますが、たまに「学校に行きたくない」と言います。その時「休んでいいよ」と言うと、「いや、行かなきゃダメだ」って返ってくるのです(笑)。結局、次の日には学校に行きます。
子どもは、いい時だけしか褒めてくれないと、悪いことを始めます。悪い部分の自分も愛してほしいから、親を試すのです。だから、悪いところもいいところも全部好きっていうのが大事ですね。

編集長: まるごと子どもを愛してあげるということですね。
最後に、読者の方に、メッセージをいただけますか?

のぶみ: 仕事が上手くなる方法は1つしかなくて、ミスをしたら、次は同じミスはやらないことです。失敗したら、僕はそれをメモしておきます。
保育の仕事をしている人も、自分と教育方針が違うから嫌だなとかではなくて、自分の考えや固定概念はとりあえず置いておいて、「どうしてそうなったのか?」と、1回聞いてみると良いです。そして、相手の言うやり方で1回実践する、本当に嫌だったらやめればいいけど、そうじゃないかもしれないですから。そういうやりとりを、園の中でも丁寧に続けていくのは大切だと思います。
だから、1年目とか2年目の人は、ミスをたくさんした方が良いと思います。そのあと、ミスをしなくなれば、仕事は上手くいきます。仕事ができない人や、ミスの多い人は、どうしても上手くやろうとしすぎるのです。一点しか見ていなく周りが見えてないから、上手くいかないのです。
人は失敗するものだから、仕方ないです。失敗しないと成長しません。失敗はたくさんした方がいいけど、一度した失敗は二度としないのが大切だと思います。

編集長: のぶみさん、今日は貴重なお話をありがとうございました!

のぶみ

のぶみ

経歴

160冊絵本を出版。アニメに、「NHKおかあさんといっしょ」の『よわむしモンスターズ』、「NHKみいつけた!」の『おててえほん』。
絵本に、『しんかんくん』シリーズ、『ぼく、仮面ライダーになる!』シリーズ、『おひめさまようちえん』シリーズ、『ニンニンジャーかぞく』シリーズなど。
EXILEウサさんと『絵本ダンスアース』、漫画家森川ジョージさんと漫画『会いに行くよ』をコラボレーション。
内閣府の「すくすくジャパン」キャラクター、福島の子どものためのチャリティゆるキャラ「あたまがふくしまちゃん」は、ゆるキャラグランプリ2013、2014で二年連続東北一位に。
「生協キャロっとさん」という野菜ジュースをデザイン。
Facebook、Twitterで毎日更新中。

ホームページはこちら

Facebookはこちら

Twitterはこちら