対談

料理を通して子ども達の未来を築く──料理研究家コウケンテツさん

料理を通して子ども達の未来を築く:コウケンテツ

料理は子どもの成長にとても良い影響を与える

対談風景

編集長: コウケンテツさんが料理研究家になろうと思ったきっかけを教えてください。

コウ: 僕の母は料理研究家でしたので、休みの日はよく母を手伝っていました。その中で、だんだん料理の面白さを知り、料理って楽しいと思うようになったことがきっかけです。
僕は、母が料理を作っている台所に家族皆が集まっておしゃべりをしながら料理を手伝い、皆で食卓を囲むという、生活の中心に「食」がある環境で育ち、家族との絆を深めていきました。自分が育った環境と同じように、今度は僕が中心となり食で家族を結びつける生活をしています。

編集長: なるほど、お母様の影響が大きかったのですね。
次に、料理研究家として、子育て世代の保護者や保育士に「食」を通じてどのようなことを伝えたいですか?

コウ: 食を通じた大人のあり方として「子どもが興味を持ったなら、体験させてあげる」ということを伝えたいです。
大人が料理を作っている姿を見て「自分もやりたい」と言う子どもは多いと思います。作っている側からすると、忙しい時は「手間が増えるのでやらせたくない」と思うかもしれません。しかし、料理に限らず子どもが何かやりたがった時は「じゃあ、5分だけやってみよう」「10 回だけ混ぜてみよう」と、ゴールをきっちり決めて、挑戦させてあげてください。そうすると、最後まで何かをやり通したということに対して満足感や自信を得て、子どもの興味はすぐに新しいことに移ると思います。
それにきちんとルールを決めてあげると、子どもは約束を守ることを覚えます。

編集長: なるほど、ルールの中でやりたいことをやらせてあげることが大切なのですね。これはコウさんが子ども達と料理をする際に考え付いたことですか?

コウ: はい。それに、子どもにはまだ早いと思うような作業でも、大人が見守っていれば案外色々なことができるものです。
例えば、保育園で料理教室を開催した時、ハンバーグを作ったことがあります。切る材料が多く、火を使うので子ども達には難易度が高いかと思いましたが、皆とても上手に作っていて驚きました。

編集長: 見守ってくれる人がいるからこそ、子ども達も自分の力を発揮できるのかもしれませんね。料理教室では他にどのようなことを感じましたか?

コウ: やはり料理は子どもの成長にとても良い影響を与えると感じました。
料理教室の前と、終わった後では子ども達の顔付きが全然違います。自分はこんな物が作れるのだと知った子ども達の顔は、達成感と満足感、自信に満ち溢れていますし、自分が作った物だから残さずに食べようと、責任感が芽生えます。

編集長: 自分で作ったからこそ、喜びや責任感に繋がるということですね。
コウさんは、子ども向けのレシピも研究されているようですが、子ども向けのレシピを考えるうえで、どのようなことを大切にしていますか?

コウ: レシピには、子どもが手伝える要素をできるだけ多く盛り込むという点です。また、子どもが食材を直に触り、手で混ぜ、形作ることを大切にしているので、素手で作る工程をできるだけ増やし、少しでも手で食材に触れるレシピを考えています。
材料については、季節の食材を味わってほしいと考えているので、旬の物を取り入れたレシピを考えています。

編集長: 今まで考えた子ども向けレシピの中で、おすすめのレシピはありますか?

コウ: 子どもはハンバーグやオムライスなど、洋食レシピが大好きというイメージが強いと思いますが、保育園に通う年頃の子どもは洋食よりも、居酒屋にあるような和食メニューの方を好む傾向があるのです。そのため、枝豆や冷奴、おかか和えなど、居酒屋に出てくるような油っぽくないメニューを取り入れた料理を作ると、子どもはとても喜びます。

編集長: 居酒屋メニューですか、意外ですね。お酒のおつまみとしても食べられるようなあっさりした味付けの物を中心にするのが子ども向けメニューを考案するポイントなのですね!

コウ: はい。あっさり系和風メニューを中心に料理を作ってあげてください。
特に、幼児期にこのような料理を食べさせることは大切です。子どもは思春期になると、インスタント食品やファストフードを好んで食べるようになりますが、幼児期に和食の味付けや手料理といった「きちんとしたご飯」を食べることにより、思春期になって色々な食品を食べても、幼い頃食べた料理を食べたいと思う「戻る舌」が作られます。

編集長: 幼児期の食事が味覚の基本になるということですね。
では、好き嫌いが多い子に料理を食べてもらうためには、どのようにすれば良いのでしょうか?

楽しんで食べるということが好き嫌いを無くす一番の方法

コウケンテツさん

コウ: まずは、子どもにとっての食事を、家族や友達と食卓を囲む楽しい時間にしてあげてください。食を通して様々なことを学習させ、教育の一環とする方針も間違ってはいないのですが、そこに固執してしまい子どもが食事を楽しめないのでは、本末転倒です。できるだけ、「食事が楽しい」「早く食事の席に着きたい」と子ども自身が思えるような環境にしてあげてください。
それに、子どもの好き嫌いには理由が無いという場合も多いので、あまり心配しすぎないでください。僕自身、子どもの好き嫌いに悩んだ時期もありましたが、最近はバイオリズムで好き嫌いが変わるということが分かり、あまり気にすることはなくなりました。残さず全部食べることにこだわるのではなく、その子の性格に合わせて「これだけは食べる」という量を決め、ちゃんと食べられたらたくさん褒めてあげて、少しずつ食べる量を増やしていくのが良いと思います。

編集長: 食事は楽しんで食べるということが好き嫌いを無くす一番の方法なのですね。
保育園で給食を作る調理師さんに、どのようなことを伝えたいと思いますか?

コウ: 日本の保育園は素晴らしいということです。国が食育に力を入れていることもあり、特に給食のレベルは毎年格段に良くなっています。ですので、世界的に見ても日本の給食はとてもレベルが高いことを調理師さんはもっと誇りに思ってほしいと思いますし、「皆さんは素晴らしい仕事をしています」と伝えたいです。
現代では家で料理を作って皆で食事をすることが難しい家庭環境の子も多いと思います。このような場合、保育園の給食が子どもの食生活を少なからず支えていると言っても過言ではありません。食を通して調理師さんに助けられている子どもは非常に多いと思います。そういう意味でも、調理師の方々は子ども達にとって大切な部分を担っているのだという自負を持ってほしいと思います。

編集長: 調理師さんは子どもの栄養管理を担う、やりがいのある仕事ということですね。
調理師さんは食材の購入も行う場合が多いのですが、食材を選ぶ際のポイントを教えていただけますか?

コウ: 地元の食材を使うということは、社会的にも地域的にも、とても健全な事だと思うので、地産地消をベースに選んでほしいと思います。
また、昔農家の方と食材の選び方について話をする機会があったのですが、「子どもの顔を見る時と同じように食材を見ればいい。ハリがあって、ツヤッとしていて、顔色が良い子は健康だと思うでしょう? 野菜も同じように、元気だと思う物を選べばいい」と言われました。子どもを育てるように愛情を込めて食材を作っている生産者だからこその視点に、目から鱗が落ちたような気分になりました。その言葉を聞いて以来、僕も食材を選ぶ時は子どもを見るのと同じように見ることにしています。調理師の皆さんも、良かったら参考にしてください。

編集長: 最後に、MIRAIKUの読者に向けてメッセージをお願いします。

コウ: 子どもと接していると、大変なことも多いと思います。しかし、子どもに料理を作り、子どもと接し、子どもを育てる行為は、すなわち日本の未来を築く行為です。辛いことがあった時は「自分は5年後、10年後、遠い未来に繋がる、とても大切なことをしているのだ」と思ってください。
僕自身も辛い時は、自分達のやっていることは巡り巡って子ども達の糧となるのだと信じて、料理研究家としての活動や子育てをしています。
皆さんも辛くなった時は、子ども達の未来を想って頑張ってください!

編集長: 今、子ども達にしてあげられることが、子どもの未来や社会の未来を作るということですね!
コウケンテツさん、本日は本当にありがとうございました。

コウケンテツ

コウケンテツ

経歴

大阪府出身。
料理研究家である母・李映林主催のeirin’s kitchenにてアシスタントを経験後、2006年に独立。
姉・コウ静子も料理研究家である。
韓国料理を中心に、素材の味を生かしたヘルシーなメニューに定評がある。
現在は雑誌や本、テレビ、ネットコンテンツ、イベントなど多方面で活躍中。
講演会などでは自身の経験をもとに、家庭での食のあり方、食を通してのコミュニケーションを広げる活動に力を入れている。

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