対談

食とメンタル

食とメンタル:奥田弘美

子ども時代の体のケアが心も体も元気にする

編集長: 奥田先生の著書「自分の体をお世話しよう」は、子どもも大人もどちらが読んでも楽しめる内容ですが、出版された経緯を教えていただけますか?

奥田: 私は町のクリニック、産業医と言って、色いろな会社でメンタルケアをしているのですが、若い世代の方の食生活や睡眠が非常に乱れているんですね。その乱れがベースとなってストレスを抱え、うつになったり、体調を崩してしまう人が後を絶たないのですね。子どもの時にしっかり自分の体をケア出来る教育を受けた人というのは、大人になってもちゃんと出来ていて、メンタルはもちろん、体も非常に元気なのです。
ここ10年、20年で日本人の食生活や生活パターンもがらりと変わって崩れかけているので「これはまずい」ということで、子どもと大人が一緒に体のお世話をサポート出来る内容の本を出版しました。

編集長: 社会問題であるうつ病も、小さい頃に自分の体をいかにお世話するかで、将来の精神的な面や体調にも影響が出てしまうのですね。
では、今回のテーマである『食とメンタル』についても本に書かれてますが、食とメンタルはどのように繋がっていらっしゃるのでしょうか?

奥田: みなさん、食事とメンタルが繋がっていると聞くと意外な顔をされるのですが実は心というのは脳が作り出しているんですね。
例えば、ケーキを見たとします。そうしたらケーキへの視線、目からの刺激が入ります。「美味しそうな色だな~」と。鼻から匂いが入ります。「いい匂いだな~」と。この目や鼻からの刺激、味覚、聴覚、触覚の五感と言われているものが色いろな所から刺激に入るのですね。それが脳に伝わって脳が分析するのです。そこで様ざまな経験や記憶が関与して「甘くて美味しそうだし、実際に食べたら甘いし美味しいし、幸せだな~」と。そこで、心が作られるのですね。脳だけで作っているのではなく、色いろな刺激を脳で統合した結果、心が動かされるのです。
この脳というのはとても重要な臓器なのですが、脳を動かしているのは何かと言いますと、脳も皮膚や内臓と一緒で食べ物が栄養とされているのですね。脳も正しい食べ物で色いろな脳細胞が作られて、脳の中から様ざまな物質が出ているのです。みなさんもお聞きになった事があるセロトニン(攻撃性、不安、興奮の調整)やドーパミン(神経を興奮させ快楽・集中力・意欲を作る)などは、心の動きを作り出す脳内物質なのです。
このように脳から出る物質で感情を作っているのは分かると思うのですが、この物質を分析すると、いわゆる食事から採るアミノ酸や脂肪といったものが色いろ合成されて出来ているのです。食事をちゃんとしないと、こういう物質もこれを作り出す脳細胞もきちんと働かないわけですね。もちろん、みなさん食事をバランス良く食べないと体力や筋肉が落ちることや脂肪が増えることはご存知だと思いますが、脳にもすごく栄養が絡んでいるのです。だから食事というのは、感情にも食事にも重要なのです。

脳にいい食事は体にもいい食事バランス

編集長: なるほど。私も食事というのは体を作ることやダイエットでは考えていましたが、脳からの刺激で感情にも影響があるというのは認識していませんでした。食事のバランスが悪いと病気になったり、精神的に病んでしまったりなどもあるのですね。
そうすると、どんな風に食事のバランスをとっていくと脳にとってもいいのでしょうか?

奥田: もうそれは、皆さんがお子さんに教育されている、体に良い食事イコール脳にも良い食事なのですね。
区別して考える必要もなくて、赤色、黄色、緑色、白と皆さんご存じの栄養バランスのグループ分けに従って、バランス良く食べれば脳にもすごく良いのです。
好き嫌いのある子も、同じ色グループで食べられるものを代用すれば偏りなく食べられます。ピーマンが嫌いな子どもにピーマンを食べないと駄目というよりは、食べられる野菜にしてあげるのも良いと思いますよ。大人になれば食べられるようにもなりますので。

編集長: そうなのですね。好き嫌いも食事のバランスで補えるのですね。
でもいま、バランスのいい食事をとれている家庭って少ないような気がするのですが、やはりそういう家庭は増えていますか?

奥田: 増えていますね。特にお母さんの栄養の知識というのがどんどん落ちてきています。
お母さん自身がダイエットをしているので、娘も太らせては可哀想だという事で保育園の頃からお腹が空いているのに食事制限させたり、肉は太るといった間違った知識を持ってしまい、野菜だけの料理にする方もいます。
まずは正しい栄養の知識をお母さんが知ってもらい、子ども達に正しい食事をしてあげるのが大切だと感じています。

編集長: 保育園の頃からのダイエットは、子どもにとっては良くないですね。
まずは正しい知識を知ってもらい、知らない事によって今のままだと子どもの将来の心と体に悪影響を及ぼしてしまう事を理解してもらいたいですね。

奥田: そうなんですね。お母さんがまず赤色、青色、黄色、白色の食事のバランスをもう一度知ってもらい、毎日の食事を改善することによって子どももお母さん、お父さんも心と体が健康になり、元気な生活が出来るようになると思います。

編集長: 私もいつもの食事では、赤・青・黄・白のバランスを考えないでとっていますので、これから気を付けないといけませんね。
 食事の他に気をつけることはありますか?

奥田: そうですね。一番自分の体をお世話するのに重要なのが食事で、次に睡眠ですね。食事というのは先程お話した感じです。
睡眠は、眠ることで頭の中から色いろなホルモンが出るのです。例えば、子どもは眠ることによって成長ホルモンが出るので、身長が伸びたりするのです。
また睡眠には、体と心の疲れをとるという重要な働きがあります。大人は最低6時間、子どもは最低8時間以上の睡眠をとらねばなりません。睡眠不足だと太りやすくなったり、体調不足になりやすくなったり、イライラしたり、集中力が落ちたり。最後に運動です。運動をすることにより、色いろな刺激を受けて筋肉を発達させるのですね。運動をしないとお腹が空かないので、良い食事を作っても子どもが食べないんですね。なので、お腹を空かす為にも運動することが大切です。食事、睡眠、運動もバランスが大切ですね。

子育ては一種のストレス状態バランスよく食べて寝て!

編集長: なるほど、食事、睡眠、運動、感情すべて含めて食育ですね。
お話が変わりますが、子育てしている方も患者さんで来られる方もいらっしゃるのですか?

奥田: はい、結構いますよ。子育ては一種のストレス状態ですので、非常に体力、気力を使いますし、特に保育園児をお持ちのお母さんは、一番子育ての中でストレス度が高いと思いますね。やっぱり、私も保育園に預けている時が一番子どもに手がかかりましたし、子どもも小さくて体も弱いですから、熱を出したりも多いですし、本当にお母さんが疲れやすいのですね。
保育園に預けていらっしゃるお母さんは、働いてもいるのでそこでも体力、気力を使いますので、保育園児のお母さんというのは、自分自身もしっかりとバランス良く食べて寝てというのをしないと、子育てが上手く回らないと思いますね。

編集長: 最後に、食とメンタルで保育園の先生や保護者に向けてのメッセージをお願いします。

奥田: はい。保育園の先生は、保育園では栄養士さんなどがいらっしゃるので食事は大丈夫だと思いますが、保護者の方に定期的に食事バランスの大切さを伝えていただけたらと思っております。
保護者の方は、お子さんとご自身の心と体の健康のためにも、ぜひこの機会に正しい栄養の知識を学んでいただけたらと思います。

編集長: 奥田先生、とても貴重なお話をありがとうございました。

奥田 弘美先生

奥田弘美先生

経歴

精神科医・産業医として老若男女のストレスケアやメンタルケアに関わりながら、本の執筆や講演にて心身の元気アップ法を精力的に伝えている。雑誌、新聞などの監修・連載経験も多数。
近著は「部下をうつにしない上司の教科書」(東京堂出版)、「ココロの毒がスーッと消える本」(講談社)、「自分の体をお世話しよう ~子供と育てるセルフケアの心~」(ぎょうせい)。
私生活では13歳と9歳の男児のママであり、保育園に子育てを支えてもらったことに深く感謝している。