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保育士のメンタルケア講座vol.11 ストレスに強くなるためのセルフケア『心の充電法』──精神科医・執筆家 奥田弘美先生

保育士のメンタルケア講座vol.11 ストレスに強くなるためのセルフケア『心の充電法』

2016.04.15

「心の充電をしてエネルギーを増やしましょう」

編集長: 今回は、ストレスに強くなるためのセルフケア『心の充電法』についてお話をうかがいます。よろしくお願いします。
シリーズの第5回『心の充電チェックをしよう』というテーマで、ストレスでエネルギーが減ってくることへの対処法を色いろと教えていただきましたが、今回は、「心の充電をしてエネルギーを増やしましょう」ということですね。

奥田: はい。堀川さんは心の充電をするときはどうなさいますか?

編集長: 私は、心のエネルギーが落ちないように、仕事で悩みがある時には、1人で海に行って、1時間くらいぼんやりと眺めています。それでストレスが解消されて、充電されたと感じます。あと子どもがいるので、一緒に遊んでいると、充電されている感じがしますね。

エネルギーが入るモデル「リラックス」「ワクワク」「休息」

心の充電池モデル

編集長: 「充電法」には、どういう方法があるのか教えてください。

奥田: 堀川さんの方法もとても良い方法の1つです。

前の復習になりますが、心が充電池のようにエネルギーレベルが下がったり上がったりしていると仮定した『心の充電池モデル』を紹介しました。
心を充電池に見立て、ストレスがかかるとエネルギーが出ていく。自分の心が本当に望んでいること、例えば「リラックスしたいな」「休息したいな」「自分が本当に好きなワクワク楽しいことをしたいな」などをすると、エネルギーが入るというモデルです。

まさに堀川さんがなさっているのは、「リラックス」と「ワクワク」だと思うのです。「休息」も入っているかもしれません。
1人で海に行くのは時間にも縛られないし、自分が素に戻り「ぼーっ」とできて楽に過ごせる時間ですよね。
ビジネスで気心の知れない方と利害に気を遣いながら緊張して話すより、自分の子どもと遊んだり、仲の良い家族とゆったり過ごすというのは、心が無条件に「リラックス」できます。それを無意識にされてると思うんです。

保育士さんは、真面目で頑張り屋さんが多いと思うので、常に自分に気合を入れて「これをしたらすごく勉強になる」「これをやったらお子さんや保護者の方に喜ばれる」と自分に色いろなことを課して、ストレスと気づかずに「ねばならない」や「するべきだ」と考えてしまうのではないでしょうか。
しかし、そればかりしているとやはりエネルギーが出ていってしまいます。

1日に1回は、「自分がその時望んでいることをやってあげましょう」というのが私からの提案です。ストレスがかかればどうしてもエネルギーが出ていきますので、自分で意識して何かエネルギーを入れてあげる習慣をつけると良いですね。
時間やお金があまりかからなくて、特別な人がいなくてもできることをおすすめします。

充電法その1 『7つの至福リスト』

奥田: その方法として『7つの至福リスト』をご紹介します。
エネルギーを自分に入れることで、これをすれば「元気になる」「エネルギーを貰える」「心が安らぐ」ということを、7つほど挙げてください。
一週間は7日あるので、7つくらい出しておけばその時の気分や状況に応じて使い分けられます。エネルギーを充電したいと思っても、疲れているとすぐに浮かばなかったりするので、あらかじめメモしておきましょう。

7つの至福リスト

また、ポイントは1人でできること、お金や時間がさほどかからないことです。
先ほど、堀川さんがおっしゃった「お子さんと遊ぶ」というのは、お子さんがいないとできませんよね。また、「海に行く」というのは時間が必要です。
まずは1人で身近なものや場所で、1時間程度でできることから選んでください。 例として、

  • 大好きな音楽を聴く。
  • 好きなスイーツや飲み物をゆっくりリラックスしながら食べたり飲んだりする。
  • 好きな本や雑誌、DVDを見て楽しい気分にする。
  • ワクワク系で、洋服や化粧が好きな方は、ウインドーショッピングをする。
  • 自然系で、散歩コースや、海辺や、川沿いで自然に触れる。
  • 肩こりがひどい方は、お仕事帰りに街のマッサージルームで癒す。

など、何でもいいんです。

「今日の私へのご褒美」のような感じで、毎日少し時間が空いた時に一つしてあげる。それがデイリーなエネルギーを充電することになります。

充電法その2 『人生の休演日』

編集長: 他には何かありますか?

奥田: 堀川さんの体験の「海に1人で行くこと」は休暇がとれた時や休日にやっていただきたいですね。
これを『人生の休演日』と名付けています。

私達は色いろな役割を背負って生きています。堀川さんは社長・編集長・家庭に帰ればパパ・奥様に対しては旦那様・ご自分のお父様に対しては息子です。人間は演じる役割をいくつか持っています。
演じている時は、自分に無理をさせたり、自分を鼓舞して頑張ったりと、ストレスがあります。いくら楽しくお子さんと遊んでいても、お子さんの体調や安全面に気を遣いながら遊びますよね。
堀川さんの親の顔としては、あまりふざけたこともできないし、お子さんに対して教育的に悪いことはできないですよね。
そんな役割のある世界からちょっとエスケープして、素の自分に戻るために海に行き、1人になって『人生の休演日』をしていらっしゃったわけです。

自分の役割が染みついている場所は、役割を思い出したり考えたりするので、海や、普段行かないようなカフェや、自分の演じる役割の匂いがついていない、イメージされないような場所で、3時間でも、可能だったら半日ほど「ぼーっ」とするのはとても良いリラクゼーションになります。
また、自然がある所はリラックスしやすいです。海が近くにない方は、植物園や動物園など普段は行かないきれいな公園でもいいです。
すごく素敵なホテルやカフェに行って、1人でお茶しながら好きな本を読んでみるのもいいと思いますよ。

編集長: 『人生の休演日』は、どのくらいの期間でとるといいのでしょうか? 本当に辛い時にとったほうがいいのか、それとも定期的にとるといいのでしょうか?

奥田: 定期的にとれる人はとったらいいのですが、みなさんお忙しいと思いますし、この方法は時間もお金もかかります。
しかし、入ってくるエネルギーは結構大きいので『心の充電チェック』を毎朝していて「最近どんどんエネルギーが下がっているなあ」「体がどんどん疲れて心も疲れているな」「ちょっとプチ鬱かなあ」という時に実践していただくといいですね。
『7つの至福法』は日々補うイメージですが、『休演日法』はプチ・ホリデーのようなイメージになります。
ドカーンとエネルギーが入るので「疲れ果てたなあ」という時に意識してそういう時間をとると有効的だと思います。

充電法その3 『感謝』

編集長: 素の自分になるのがポイントなんですね。もう1つは何ですか?

奥田: 人間関係の中で、心が最も元気になる感情は『感謝』と言われています。
これは宗教、スピリチュアル分野、自己実現分野でも言われていますが、人に『感謝』する気持ちを感じた時、エネルギーが入るのです。
自分のエネルギーが下がっている時は周りが敵に見えたり、自分が小さい人間に思えたり、役に立っていないと自分を責めてしまったり、逆に周りを攻撃して不満を抱えがちになり、余計にエネルギーが下がっていきます。
そんな時は、あえて「ありがとう」を探してみましょう。『感謝』の気持ちを探すということです。

日本人は『感謝』の気持ちを見つけやすいのです。
例えば、日本は清潔で、街も自由に歩ける、安全で平和な国です。そんな日本に生まれて良かったなぁというのが1つ目の『感謝』だと思います。
2つ目は、ご両親のことを思い出したり、自分を可愛がってくれたおじいさんやおばあさんを思い出して『感謝』の気持ちを感じてみる。
3つ目は、友達や職場、保育園の中で自分の味方になり支えてくれる方に『感謝』の気持ちを感じましょう。
まずはこの3つくらいを使い分けて行っていただくと、保育士さんのハードワークでエネルギーが減りがちなのを防げると思います。

編集長: 今回は『心の充電法』についてお話をうかがいました。
次回は、最終回ですね。最終回は園長先生数名と『保育士さんの笑顔を守るために今必要なこと』というテーマで対談をしたいと思います。

奥田: 楽しみですね。よろしくお願いします。

編集長: 奥田先生、今回も貴重なお話ありがとうございました!

奥田 弘美

奥田弘美先生

経歴

精神科医・産業医として老若男女のストレスケアやメンタルケアに関わりながら、本の執筆や講演にて心身の元気アップ法を精力的に伝えている。雑誌、新聞などの監修・連載経験も多数。
近著は『一流の人は、なぜ眠りが深いのか?』(三笠書房)、『ココロの毒がスーッと消える本』(講談社)、『自分の体をお世話しよう ~子供と育てるセルフケアの心~』(ぎょうせい)。
私生活では16歳と11歳の男児のママであり、保育園に子育てを支えてもらったことに深く感謝している。

『思い込みから解放されたらするっとやせて20年リバウンド知らず! 精神科医の脳ダイエット』奥田弘美著