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保育士のメンタルケア講座vol.7 ストレスに強く成るためのセルフケア 『睡眠』の心得──精神科医・執筆家 奥田弘美先生

保育士のメンタルケア講座vol.7 ストレスに強く成るためのセルフケア 『睡眠』の心得

2015.04.15

保育士さんには、絶対睡眠不足になってほしくない

編集長: 私自身の経験でも、寝不足の日はどうしてもイライラし注意力散漫になります。なぜ睡眠不足はメンタルに影響するのか、教えてください。

奥田: 睡眠不足だと、てきめんにメンタル状態が悪くなります。睡眠により、その日の脳の疲れをとっているんですね。
ストレス社会の現代、一日の活動を通じ、たくさんのストレスも受けることで脳は疲れます。『睡眠』というのは、脳の唯一の休息時間なんですね。
体はソファーで横になっていればある程度休息がとれるのですが、脳は寝ない限り休息がとれません。睡眠中にその日の疲れ、ストレスなどのケアをしています。
また、嫌な記憶を薄めたり、その日得た知識や、楽しかったことなど、自分にとってプラスのものは定着させてくれます。

ストレスがかかってきたときに生じる睡眠ダメージ

もちろん寝ている間に体の疲れもとっています。筋肉や細胞一つ一つを修復する『成長ホルモン』がどーんと出るのも就寝中です。
『寝る子は育つ』と言いますが、成長期が止まるまでは『成長ホルモン』が骨にどんどん作用して、寝ている間にぐんぐん背が伸びるように刺激を与えています。『成長ホルモン』は身長が伸びなくなった大人にもでていて、疲れをとり、傷んだ筋肉や細胞の修復や老化予防など、体全体のメンテナンスを行っています。
体にとって不可欠な『成長ホルモン』は寝ないと十分に出ないので、睡眠不足だと体の疲労がとれせん。そのためメンタル面もさらに悪くなります。
体が気だるいためイライラしたり、笑顔が減ったり、普段なら笑って流せるところをカチンときてしまったり、脳の疲れがとれていないので、ケアレスミスも増えます。

子どもの安全面を管理する保育士さんは、寝不足により注意が行き渡らず、思わぬ事故がおきやすくなったり、保育士さん自身も怪我をしやすくなったりします。体の疲れもとれていないので、動作も緩慢になるし、体が動かないことで怪我をしやすくなったり、失敗が増えたりということもあります。
保育士さんには絶対に睡眠不足になってほしくないな、と思いますね。

編集長: 何時間ぐらい寝るといいのですか?

奥田: 長生きの方や健康状態が良い方の睡眠時間は7時間が多い、というデータがでています。
前日の疲れ具合によってプラスマイナスがでてきますが、6時間は寝ないと脳と体のメンテナンスができないので、働いている方は最低6時間は寝ましょう。
最低6時間、ベストは7~8時間と覚えておいていただければいいと思います。体が睡眠を要求する不調時は、寝られるだけ寝てあげたらいいですね。

ストレス解消のための睡眠 キーは『睡眠の質』

編集長: ストレス解消のための、理想的な睡眠方法はありますか?

奥田: なかなか十分な睡眠時間をとれない方が多いですよね。最低6時間がおすすめなのですが、自分がとれる範囲でいい睡眠をとっていただくために、いつかコツがあります。

まず、パソコンやスマホ画面のブルーライトは睡眠にとって非常によろしくないというデータがでています。スムーズな睡眠がおこりにくいんですね。スマホを含めたIT機器、ゲーム機は、寝る1、2時間前から触らないのが原則です。寝床にまでスマホを持ち込んでいることが原因で、不眠症になることもあります。
良い睡眠というのは体と心がリラックスしてはじめて訪れるので、今までバリバリと仕事をしていて「さあ、今から寝ます」というのは、よほど疲れていない限りなかなか難しいのです。
いったんリラックスモードに入って眠気がおきる流れなので、寝る2時間前ぐらいからはゆったりと入浴する、何かするにしても、テレビをぼーっと見るとか、雑誌をぱらぱらめくる、音楽を聴くなどして、ゆったりと過ごしていただいたらいいと思います。

お酒は、やはり寝る2時間前ぐらいから飲まないほうがいいですね。寝る直前の飲酒は睡眠の質を悪くするといわれています。寝つきは良くなる人が多いのですが、深く眠ることができず、途中で何度も起きたり、悪夢にうなされることで脳の疲れがとれないと言われています。
飲み会で次の日休みなどという時以外は、寝る2時間ぐらい前までにはアルコールを飲み終えましょう。普通に飲める方であれば、ビール500ml、ワインなら2杯程度、日本酒なら1合程度が適量ですね。弱い方はもっと控えてください。
これらの量程度の晩酌なら2、3時間あけて寝ていただくと、睡眠への悪影響は少ないです。

あとは、基本的に静かな暗い部屋で寝るということですね。
街灯やネオンの光が差し込んだりすることで、その明るさで睡眠が浅くなってしまうことがあります。
遮光カーテンは逆に朝日が入り込まないので、睡眠のリズムが狂いやすくなります。カーテンを通して朝日が入ってくるような、ちょっと厚めのカーテンを選んでいただくといいですね。どうしても遮光カーテンが必要なら、カーテンの一部を少し開けておきましょう。

このようにして、できるだけ質の良い睡眠をとるように心がけていただくといいと思います。

寝つきの悪さには『寝具』『カフェイン』『飲酒』『寝だめ』の見直しを

編集長: 寝つきが悪い場合はどうすれば良いでしょうか?

奥田: 寝つきが悪い方の場合は、カフェイン入りのコーヒー・紅茶・お茶などは午後3時以降は飲まないほうがいいですね。寝つきに問題のない普通の方でも、夕方以降は飲まないほうがいいでしょう。
カフェインが体の中で代謝されるのに5時間ぐらいかかると言われています。

昼寝なども避けていただき、睡眠前のリラックス時間をちょっと多めにとっていただく。
寝つきの悪い方というのは神経が緊張しやすく、日中受けたストレスや心配などで、神経がほぐれにくいので、夕食後はなるべくゆっくりと過ごしていただくのがおすすめです。

また、今の時期はいいのですが、暑くなってきたら、お風呂も寝る直前じゃないほうがいいですね。いったん上がった体温が下がってくるときに眠くなるので、暑い時期は上がった体温がなかなか下がらずに寝つきが悪くなります。
夏は就寝1時間前ぐらいには入浴を済ますといいと思います。

寝つくのに毎晩1時間以上かかるようなら、医者に相談してもいいですね。日中普通に活動されている方なら、寝つくのは1時間以内というのが目安です。
たまに、嫌なことがあったり、妙に頭がさえてしまったりして寝つきが悪くなるのはいいのですが、寝つきの悪さが連続しているとなると不眠症が疑われます。

編集長: 寝て起きると疲れている、というのは?

奥田: 多分熟睡できていないのでしょう。寝る前の飲酒や、寝具を見直してみましょう。
寝具はお金をかけて質の良いものを使われることをおすすめします。若い時は気にならないかもしれませんが、だんだん年をとってきたら、心地よい寝具を使うのがいいですね。

休日に寝だめしない、というのも大切です。基本的に寝だめはできないと言われています。
疲労回復のため普段より長い睡眠をとるのはいいのですが、昼前に起きましょう。昼過ぎまで寝てしまうことで体内時計のリズムが狂い、その日の夜眠れなくなったりして睡眠時間がずれこみ、結局月曜が辛くなります。休日であっても昼前には起きてほどよく体を動かし、疲れをとっていただければと思います。

編集長: ストレスに強くなるためのセルフケア『睡眠』についてのお話、どうもありがとうございました。
次回はストレスに強くなるためのセルフケア第3弾『リラックス時間』についてです。

奥田 弘美先生

奥田弘美先生

経歴

精神科医・産業医として老若男女のストレスケアやメンタルケアに関わりながら、本の執筆や講演にて心身の元気アップ法を精力的に伝えている。雑誌、新聞などの監修・連載経験も多数。
近著は「部下をうつにしない上司の教科書」(東京堂出版)、「ココロの毒がスーッと消える本」(講談社)、「自分の体をお世話しよう ~子供と育てるセルフケアの心~」(ぎょうせい)。
私生活では13歳と9歳の男児のママであり、保育園に子育てを支えてもらったことに深く感謝している。

『精神科医が考えた忙しすぎる人のための「開き直り」の片づけ術』