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保育士のメンタルケア講座vol.5 ストレスに強くなるためのセルフケア~心の充電チェックをしよう~──精神科医・執筆家 奥田弘美先生

保育士のメンタルケア講座vol.5 ストレスに強くなるためのセルフケア~心の充電チェックをしよう~

2014.10.15

自分のエネルギーレベルを感じ取ることから始める

編集長: 皆様こんにちは!今回も保育士のメンタルケアについて、奥田先生にお話をうかがいます。奥田先生、よろしくお願いします。
さて、今回は「ストレスに強くなるためのセルフケア」についてですが、そもそもストレスに強い人・弱い人の違いはどのようにして決まるのでしょうか。やはり性格の違いでしょうか?

奥田: ストレスに強い人は、ストレスを感じないポジティブな性格というイメージがあると思いますが、ストレスを感じない人間などいません。ストレスに強い人とはストレスを感じない人ではなく、ストレスを感じてもすぐに心をリカバリーして元気な状態に戻すことができる人です。

編集長: なるほど。では、ストレスに強くなるにはどうすれば良いでしょうか?

奥田: ストレスに強くなるためには、自分の心のエネルギーレベルを感じ取ることが大切です。
前回もお話ししましたが、人間は自分にとって「楽しい」「安らげる」と思えることからエネルギーを得ることができますが、ストレスを感じるとエネルギーがどんどん体の外に出て行ってしまいます。
それを理解して、自分のエネルギーが流出している時、すぐにそれを感じ取って素早く元の状態に戻すことができれば、ストレスに強くなることができると思います。

編集長: 自分のエネルギーレベルがどうなっているかを感じ取ることから始めればいいのですね。しかし、どうすれば素早く感じ取ることができるのですか?

自分の心を充電池に例えて心のエネルギーをチェックする

図1:心の充電池モデル 図2:セルフワークシート

奥田: 目に見えるものではない心のエネルギーレベルを感じ取るためには、図1「心の充電池モデル」を参考に、自分の心を充電池に例えてみると良いと思います。
毎朝起きた時や夜眠る前に、この図のように自分の心を充電池とのか?」と考えて下さい。この時大切なのは、熟考して数値を決めるのではなく「今の自分は○○%」と直感で判断することです。(図2 マイ・心の充電池 参照)
このチェックを毎日自分で行い、エネルギーレベルが下がってきたと感じたら数値を調整できるようになると良いと思います。
ちなみに、今まで最高に体調が良くて心も元気だった時が100%、布団から起き上がれないくらい疲れている状態が0%として、今のコンディションを判断すると良いと思います。
エネルギーレベルが80%以上の方は調子がかなり良い状態と言ってもいいでしょう。心が元気だと思う時は多少負荷になることも「挑戦」という視点でポジティブに捉えることができるので、「今日は絶好調!」という日は苦手なことや新しいことに思い切ってチャレンジしてみると良いですね。
40%~79%くらいの数値の方は、少し疲れている状態だと思います。あまり頑張りすぎないようにして、自分の好きなこと・やりたいことも予定の中にしっかり組み込みましょう。
40%未満の方はかなり疲れているので、しっかりと休養を取って下さい。心が「お疲れモード」になってしまうと、緊張することや負荷がかかることは全てストレスと感じてしまうので、やるべきことや苦手な人と会う用事などをできるだけ減らし、その時間を自分のために使って下さい。

編集長: エネルギーレベルは自分で調節できるものなのですか?

奥田: はい。簡単に調節できるようになります。
まず1日のはじめに、今日やりたい「自分にエネルギーを与える用事」と、今日やらなければいけない「自分からエネルギーが流出する用事」は何か考えましょう。
毎朝エネルギーチェックを終えた後、図2「セルフワークシート」を参考に1日のスケジュールを書き出すと分かりやすいと思います。
エネルギーレベルが低く、疲れが溜まっている時は、自分にとってエネルギーが流出しそうな用事は減らし、その分自分の好きな事をする時間を増やしてエネルギーを回復して下さい。
このように、エネルギーレベルが下がった時に予定を調節して心のバランスを整えられるようになれば、ストレスを感じてもすぐに回復できるようになります。

心のエネルギーに鈍感な人は、心のバランスを崩しやすい

奥田: 「仕事ができる人は遊び上手」という言葉の通り、ストレスに強い人はこのチェック&リカバリーの流れを無意識のうちに行っています。そのため、回復が早くストレスが溜まった状態を継続することがないのです。
しかし、真面目でストイックな人はこの流れが苦手で、自分が疲れていることに気付かず無理やり心に負荷をかけ続けてしまいます。頑張り屋さんで自分の心のエネルギーに鈍感だからこそ、どんどんエネルギーが失われていき、体調や心のバランスを崩してしまいやすいのです。そうならないためにも、真面目な性格の人は特に心のエネルギーチェックを欠かさずに行ってください。例えエネルギーレベルに鈍感な人でも、チェックを毎日行うことによって自分の心のバランスを上手くとれるようになり、ストレスに強くなることができると思います。
まずは自分の心に素直になって、心のエネルギーを毎日自分でチェックしてみてください。

編集長: 自分のエネルギーレベルによって、仕事と遊びの割合を変えることが大切なのですね。
では、やりたいことがなかなか思い浮かばない人はどうすればいいのでしょうか?

奥田: エネルギーを得られることをたくさん思いつく人は、その分エネルギーの補充先が多く、ストレスにも強くなります。しかし、あまり思い浮かばない人は、あらかじめ自分にとってのエネルギー補充先を頭の中で棚卸しておくと良いと思います。いざストレスを感じると頭の回転が鈍くなってしまい、どうやってエネルギーを回復すればいいのか思いつかなくなってしまうので、「自分はこういう時嬉しいと思う」「自分はコレが好き」と思えることを探してリスト化しておきましょう。

編集長: 今回教えていただいたセルフチェックの方法は、個人が自分の状態を把握するためのものでしたね。では、ストレスに強い保育園を作るためには、園長先生が保育士さん達にこの方法を実践するように指導すると良いということでしょうか?

奥田: はい。ミーティングの時などにセルフチェックの方法を説明して、全員で実践すると良いと思います。
また、保育士さんの特性によって業務をうまく振り分ける工夫も大切です。例えば、ある保育士さんにとって工作の仕事はストレスに繋がる業務だったとしても、違う保育士さんにとってはエネルギーを得ることができる業務かもしれません。保育士さん同士で全員の得意な業務を知っておけば、お互いにエネルギーのバランスを整えるサポートができると思います。

編集長: 毎日全員で心のエネルギーチェックを行い、仕事仲間の特性と得意な業務を共有すればストレスに強い保育園になるというわけですね。
奥田先生、ありがとうございました! 次回もよろしくお願いします!

 

※注釈:『心の充電池』理論は奥田弘美医師のオリジナルです。無断での転載・引用は著作権違反となりますのでお控えください。

奥田 弘美先生

奥田弘美先生

経歴

精神科医・産業医として老若男女のストレスケアやメンタルケアに関わりながら、本の執筆や講演にて心身の元気アップ法を精力的に伝えている。雑誌、新聞などの監修・連載経験も多数。
近著は「部下をうつにしない上司の教科書」(東京堂出版)、「ココロの毒がスーッと消える本」(講談社)、「自分の体をお世話しよう ~子供と育てるセルフケアの心~」(ぎょうせい)。
私生活では13歳と9歳の男児のママであり、保育園に子育てを支えてもらったことに深く感謝している。