保育園運営のヒント

保育士のメンタルケア講座vol.4 ストレスが溜まってきたら、どうすればいいの? ストレス解消法を教えて──精神科医・執筆家 奥田弘美先生

保育士のメンタルケア講座vol.4 ストレスが溜まってきたら、どうすればいいの? ストレス解消法を教えて

2014.07.15

ストレスがかかっている時はストレスの原因を遠ざける。

編集長: 皆様こんにちは! 今回の保育士のメンタルケア講座を始めたいと思います。奥田先生、今回もよろしくお願いします。
前回の対談ではストレスが溜まると心と体にどのような影響が出るのかという部分を教えていただきましたので、今回は「ストレスが溜まってきたらどうすればいいのか」という部分について教えて下さい!

奥田: わかりました!
まずは、自分で自分のストレスに気付くことが大切です。
ストレスが溜まると疲労や倦怠感、気分の落ち込みなど、不快な症状が出ます。「おかしいな、調子が悪いな」と思った時は、自分がストレスを抱えていないか考えてみて下さい。
次に、ストレスを自覚したらどうすれば良いかですが、ストレスとはエネルギーが外に出て行っている状態のことです。お湯を溜めた風呂の栓を抜いたように、どんどん自分からエネルギーが無くなってしまっているので、エネルギーの流出をストップさせなければなりません。
流出を抑えるためには、エネルギーを吸い取っているストレスの原因を自分から遠ざけることが必要です。職場にストレスの元凶があるのなら、できるだけ残業をせずに速やかに職場から離れ、リラックスできる場所へ行くなど、少しでもストレスとは無関係な場所に居る時間を設けると良いと思います。

編集長: ストレスの原因と接点が無い時間を作ることが大切なのですね。
他には、どのようにエネルギーの消費を抑えればいいのでしょうか?

奥田: 連載第2回の時にお話ししたように、環境の変化はストレスになります。ストレスがかかっていると感じたら、新しい変化やチャレンジは避けて下さい。気分転換のつもりで新しいことを始めても、ストレスを上乗せしてしまうことになりかねません。業務中も新しい仕事や役割を引き受けることは避けた方が無難です。
また、ストレスでエネルギーが減っている時は「○○しなければならない」と自分に言い聞かせることは避けて下さい。嫌な事を頼まれた時には、勇気を出して断ることも必要です。真面目な人ほど「○○しなければならない」と、自分を追いつめてしまう傾向にあります。しかしストレスを抱えている時に自分に対して「○○しなければならない」と強いることは、エネルギーを奪うことにも繋がります。
対策として、自分のする事の中から、どうしても必要な事以外は省いて下さい。例えば任意参加の研修に毎回出席している方は「数回欠席しても、保育士としてのスキルが大きく落ちるわけではない」と考え研修を休むなど、絶対に必要な事以外は避けた方が良いかもしれません。

編集長: 保育士さんは責任感が強く、頼まれ事を断ることができずに抱え込んでしまう方が多い気がするので、適度に力を抜くのも大切なのかもしれませんね。

奥田: そうですね。自分が抱えている仕事は、絶対にやらなければいけない義務と、サービスや好意でしている+αに分かれると思います。ストレスがかかっている時は、+αの部分を省くという判断も必要です。
+αは自分の余力がある時にやれば良いので、疲れている時に無理にすることはありません。ストレスを抱えていると思ったら無理をせず、臨機応変に自分のするべきことを調節して下さい。
それに、自分の中のエネルギーを回復してから+αの仕事に手を付けた方が、絶対に良い結果を出せます。そういう意味でもまずはエネルギーの回復を優先して下さい。

ストレスがかかっている時は体にも疲労が蓄積している。

編集長: ストレスが溜まってきた時にまずやらなければいけないことは、エネルギーの流出を止め、心が疲労するのを止めなければいけないということなのですね。

奥田: そうなのです。更に、同時に体の疲労も癒さなければなりません。
ストレスがかかっている時は心だけが疲労していると考えがちですが、実は体にも疲労が蓄積しています。心にストレスを抱えていると無意識の内に全身の筋肉が緊張しますし、「嫌だなあ」と思うことで血圧が上がります。不安で心臓がドキドキしてしまい、体が普段と違う動きをすることもあります。気付きにくいですが、ストレスがかかった状態というのは体を酷使しているのです。
この疲労をカバーするためには、栄養を取ってしっかり休まなければなりません。体の疲れを取りやすくするために栄養のある物をしっかり食べて、普段よりも長く眠ることを心がけて下さい。

編集長: では、ストレスが溜まりすぎて目が冴えてしまい、眠りたくても眠れない場合はどうすれば良いのでしょうか?

奥田: 眠る前にリラックスできる時間を取って下さい。
まず、就寝5時間前ぐらいからコーヒー・紅茶・緑茶などカフェインの入っている物を飲まないようにします。何か飲みたい時は、鎮静効果のある牛乳や豆乳を飲むと良いかもしれません。
それから、好きな音楽を聴くなど自分のしたいことをしてのんびりと過ごし、ストレスの原因には出来るだけ関わらないようにしてください。また、熱いお湯を浴びると目が冴えてしまうので、寝る直前に入浴するときは、ぬるま湯がよいでしょう。
このような方法で自分の心をリラックスさせることを意識すると、眠りやすくなると思います。
しかし、本当にどうしようもない悩みを抱えてしまうと、何をしても眠れなくなってしまうことがあります。ご紹介した方法を試しても何時間も眠れない日が続く場合は、医師に相談した方が良いと思います。

ストレス解消の第二段階は消費したエネルギーを補うこと。

ストレスかな?と思ったら

奥田: 次にエネルギーの流出を止めた後、第二段階としてストレスで消費したエネルギーを補います。
楽しい、嬉しい、ほっとする、充実する、リラックスできる、と感じるようなことはエネルギーの補充になるので、趣味や習い事など自分自身が純粋に楽しめることをしてリフレッシュして下さい。
ただ、この場合も「○○が好きだから、それをしなければならない」という発想にならないように気を付けて下さい。
それから体に悪いことも避けて下さい。
暴飲暴食や深酒、過度の喫煙などは体に負担がかかります。一時は楽しいかと思いますが、結果的には体を疲れさせてしまうので、後々ストレスが上乗せされてしまいます。

他にも、自然の多い所に行くというのもおすすめです。
人間は自然に触れるとリラックスモードになるので、ストレスで気が滅入っていると感じたら、海や山などに行って日光浴をするのが良いと思います。緑や自然の傍に行くと、マイナスイオンが発生していますし、太陽光はセロトニンという坑鬱物質を体内に増やす作用があるので、太陽の力と自然の力で生体にエネルギーが入ります。

ストレスがかかっている時は、心配や不安などのネガティブな気持ちが膨らみ、自分に自信が無くなってどんどん自己嫌悪が強くなっていく傾向があるので、ノートに自分の強みや長所、過去に自分が褒められたこと、他人から喜ばれたことを書き出すのも良いと思います。
こうすることで過去の成功体験や自分の長所からエネルギーを得ることができます。
悩みを他人に話すこともエネルギーの回復に効果的です。
聞き上手で自分の話にじっくり耳を傾けてくれる人、自分のことを応援してくれる人に話を聞いてもらって下さい。話を聞いてもらうだけでも気持ちの整理ができますし、味方となってくれる人から好意のエネルギーを得ることができます。自分を温かく見守ってくれる家族や友達に相談してみて下さい。

編集長: 今教えていただ頂いたのは自分自身でエネルギーの流出を抑え、補う方法ですが、保育士さん達がストレスを溜めていると感じた時、上司はどのようなことをしてあげればいいのでしょうか?

奥田: あまりエネルギーが出て行かないように配慮して下さい。
具体的には、まず体の疲労を取ってあげることが必要です。残業をさせずに早く帰らせてあげて、重責やプレッシャーを感じるような 仕事や役割を新たに与えることは避けて下さい。
ストレスの原因となる業務が判明している場合は、他の保育士さんと業務を分担させるなど、上手く役割を振り分けて下さい。上手にストレスから隔離してあげることが必要です。
それから、なにより大切なのは優しく声をかけて、話を聞いてあげることです。保育士さんが悩みを話せる場を作ってあげることが助けになると思います。

編集長: 業務負担を減らすなどの手助けと、悩みを話して気持ちを整理する場所を作ってあげるということが大切なのですね。
奥田先生、ありがとうございました。
次回のテーマは「保育士さん座談会 私達、こんなストレス感じています」です! 次回もよろしくお願いします!

奥田 弘美先生

奥田弘美先生

経歴

精神科医・産業医として老若男女のストレスケアやメンタルケアに関わりながら、本の執筆や講演にて心身の元気アップ法を精力的に伝えている。雑誌、新聞などの監修・連載経験も多数。
近著は「部下をうつにしない上司の教科書」(東京堂出版)、「ココロの毒がスーッと消える本」(講談社)、「自分の体をお世話しよう ~子供と育てるセルフケアの心~」(ぎょうせい)。
私生活では13歳と9歳の男児のママであり、保育園に子育てを支えてもらったことに深く感謝している。