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保育士のメンタルケア講座vol.3 ストレスが溜まるとどうなるの? どういう変化が体にでてくるの?──精神科医・執筆家 奥田弘美先生

保育士のメンタルケア講座vol.3 ストレスが溜まるとどうなるの? どういう変化が体にでてくるの?

2014.04.15

ストレスが溜まると心と体のエネルギーが同時に下がる

ストレスによって起こる体と心の変化

編集長: 今回も保育士のメンタルケア講座を始めたいと思います。前回はストレスの正体や、どんなことに気を付ければいいのかをうかがいましたが、今回はストレスが溜まった時、体と心に出る症状についてうかがいたいと思います。
以前、園長として保育園を運営する中で、ある日を境に「最近元気が無くなった」「体調不良気味になった」「挨拶をしなくなった」「勤怠が悪くなった」という保育士さんを何人か見たことがあります。こういう症状が出るのもストレスが溜まっている原因なのですか?

奥田: はい。これは全て、ストレスが溜まった時に出てくる症状です。
基本的に、ストレスが溜まると心と体のエネルギーが同時に下がると考えて下さい。
まず、心のエネルギーについてですが、人は他人と接する時、無意識のうちに自分の表情を作り、相手の反応を観察しています。つまり誰かと会うという行為はとてもエネルギーを使うのです。
しかし、ストレスが溜まると心のエネルギーが下がり、他人と接するのが怖くなります。そのため、人と会いたくないと思うようになり、口数が減って愛想も悪くなります。

編集長: 仕事や人付き合いに強い影響が出てしまうということですか。

奥田: その通りです。また、女性は感情が不安定になる方が多いので、ささいなことで子どもを叱ることが多くなった、急に怒りだす・泣き出すことが多くなったなど、感情の振り幅が大きくなっている場合も心のエネルギーが下がっている可能性があります。

編集長: なるほど、ストレスが溜まると心にこんなにも影響を及ぼすのですね。
では、体にはどのような症状が出るのでしょうか?

奥田: ストレスが溜まると体の弱い部分に影響が出やすく、人によっては偏頭痛や耳鳴りなどの症状が出たり、持病が悪化することもあります。例えば、胃腸などの消化器官が元々弱い人は、ストレスが溜まってくると便秘や下痢、胃もたれという形で症状が出ることがあります。そのほかにも全体的に免疫が下がるので風邪をひきやすくなります。
また、ストレスが溜まると不眠やホルモンバランスの乱れといった症状が起こり、肌が荒れて吹き出物が出来てしまう場合もあります。
特に、ストレスは様々な形で睡眠にダメージを及ぼすので、最近睡眠が安定しないという方は注意して下さい。

原因不明の体の不調は危険信号の証

セルフチェックシート:心の充電切れチェックリスト

編集長: 自分の体の弱点に一気にダメージが来るのですね。では、ストレスが溜まっているかどうかをチェックするためにはどうすればるいいのでしょうか?

奥田: ストレスが溜まると睡眠障害になる方や、食欲不振・過食になる方が多いので、まずは睡眠面と食事面で変化がないか確認して下さい。
それから先程もお話ししたように、体には本当に様々な症状が出ます。元々弱かった部分が悪化する、倦怠感が抜けないという症状も良く見られます。また、原因不明の体の不調も危険信号の証です。
メンタル面では「面倒くさい」「興味がわかない」という気持ちが強くなり、人付き合いが上手くいかなくなります。人と会うのが嫌になる、趣味への興味が薄れる、無気力になるなどの変化があった場合は、気を付けて下さい。また、やる気・集中力も心のエネルギーで作っているので、これらが落ちて仕事でミスをしてしまうことも多くなります。
心のエネルギーがさらに落ちると、必要以上に自分を追いつめてしまうという症状も出始めます。感情が不安定になってイライラしてしまい、「いなくなってしまいたい」と思うようになる方も多いと思います。
このような症状が長く続いている場合は鬱の症状に当てはまりますので、精神科や心療内科を受診して下さい。
ストレスによる症状は、体調面に強く出る場合やメンタル面に強く出る場合、両方同時に出る場合など、個人差があります。しかし私の経験から言うと、精神力の強い男性や、常に周りに気を配り、辛くても我慢して明るく振る舞う女性は体調面に影響が出やすい傾向にあります。

編集長: 無気力な状態や体調不良が続く場合はストレスが溜まっているかもしれないということですね。自分で自分の状態を把握することが一番の対策なのでしょうか?

普段と違うと感じたら、声かけが大切

奥田: 症状を自分自身でチェックすることも必要ですが、本人が無自覚な場合も多いので、やはり上司に当たる方が職員の状態を把握しておくことが大切です。
先ほど出てきた「最近挨拶をしなくなった」「勤怠が悪くなる」という症状は、本人が気付かないまま起こることが多いです。特に、ストレスが溜まると睡眠障害になり寝過ごしてしまう、動く気力がわかずに職場に行くまで時間がかかってしまうというような場合が多くなるため、勤怠が悪くなってきた人がいたら、気にかけてあげて下さい。
それ以外でも、普段と違うと感じたら、本人を呼んで話を聞いてあげて下さい。その際、違和感があったら早めに声をかけてあげること、必ず一対一で話をすることが大切です。

編集長: 園長先生が保育士さん一人ひとりをしっかり把握しておくことが大切ということですね。

奥田: どのような性格なのかをしっかり把握しておくと、普段と違う様子の時に素早く対処することができ、悪化する前に解決することができると思います。
ストレスの症状が出ていることに気付かず放置すると、鬱病や胃潰瘍など、本格的な病気へと悪化してしまう可能性が高くなるので、話をしてストレスが溜まっていると感じたら、有給を使って休みを作ってあげる、業務を軽減してあげるなど、エネルギーを使いすぎないような工夫をしてあげて下さい。

編集長: ストレスが溜まり、取り返しのつかないことになる前に対処することが一番大切なのですね! 奥田先生、ありがとうございました!
次回は、「ストレスが溜まってきたら、どうすればいいの? ストレス解消法を教えて」です。お楽しみに!!

保育士のメンタル講座

奥田 弘美先生

奥田弘美先生

経歴

精神科医・産業医として老若男女のストレスケアやメンタルケアに関わりながら、本の執筆や講演にて心身の元気アップ法を精力的に伝えている。雑誌、新聞などの監修・連載経験も多数。
近著は「部下をうつにしない上司の教科書」(東京堂出版)、「ココロの毒がスーッと消える本」(講談社)、「自分の体をお世話しよう ~子供と育てるセルフケアの心~」(ぎょうせい)。
私生活では13歳と9歳の男児のママであり、保育園に子育てを支えてもらったことに深く感謝している。