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教えて! 川邉先生~子どものお悩み解決します──第2回 指しゃぶりをしていると歯並びが悪くなるって本当!?

教えて! 川邉先生~子どものお悩み解決します──第2回 指しゃぶりをしていると歯並びが悪くなるって本当!?

2017.01.16

【写真1】上口唇の翻転 【写真2】上口唇のめくれ 【写真3】下口唇翻転(肥厚)

指しゃぶりって……ほとんどの歯科医師から歯並びが悪くなるから早くやめさせてくださいと言われます。当然のことです。
そして、歯並びの癖を治すMFTと言われる筋肉のトレーニングでは概ね結論としては、歯並びには問題が起こるが、指しゃぶりをやめる時期を待つしかないということです。

さてさて、指しゃぶり……癖です。どうして、癖なのか。この癖というものがどのようにして生まれるのか。この問題の解決が子育てそのものであり、子ども達の癖という悪習慣を作ってしまうことの解決方法でもあるのです。
問題はただ一つ、成長に合わせた子ども達の呼吸と、飲み込みがうまくできない姿勢を作り上げてしまったためです。
上口唇の翻転(はんてん)と言われる富士山型、めくれ、下口唇翻転と言われる下唇の肥厚、めくれ、そして、歯並びは大きく変化するというよりも顔の引き締まりがなくなってしまう成長を遂げていくのです。
これらは、口呼吸の症状の1つでもあるのです。【写真1・2・3】

ゼロ歳児では、親の姿勢と唇の反射機能、そして全身の原始反射と言われる、もともと生後すぐに身体を守るための反射機能が元々備わっているので、この機能を充分に育ててあげることが子育ての基準となります。
親の姿勢は、妊娠中の時に逆子まで治る座り方、立ち方を学びます。そして、おっぱいが乳輪まで深く入るようにおっぱいを与えます。
赤ちゃんはしっかり口を開いて舌で上に向かっておっぱいをしごき、初めて正しい状態でおっぱいが飲めます。
栄養としておっぱいを与えるというだけの問題ではなく、正しい姿勢でおっぱいを飲ませてやる必要があるのです。
おっぱいを取りにきて身体全部を動かしておっぱいを飲みながら呼吸するという、生後3か月程度までしかない特殊な口の中の機構をうまく使える姿勢をしっかり教えてもらうことで、生後数日の赤ちゃんでもおっぱいがちぎれそうな感じがするとお母さん達は実感します。
生後1か月程度の赤ちゃんなら、おっぱいをしっかり大きく口を開いて取りにくることで、口はおっぱいで完全に塞がれているためにこの姿勢では鼻を高くして吸う必要があるのです。正しいおっぱいを飲みにくるという姿勢を取らせると、数分で鼻を高くするようです。
赤ちゃんが真っ赤になっておっぱいを吸う姿勢は、傍から見ていても生きるために取りにいって飲んでいるという生命の最初のエネルギーを感じます。

次に、生後3か月くらいから指しゃぶりをする子がいます。共通点は、泣く時も、おっぱいの時も大きく口を開いて泣かない。つまり、過呼吸の状態になっているのです。
実際にご自分も行なってみてください。口を目一杯しっかり大きく開くと、息を吐くことはできますが吸うことが難しくなります。

【資料2】世界一長寿の日本だが実は寝たきり

生後3か月までは口の中に特殊な機能があって、息を吸いながら同時におっぱいを吸うことができます。しかし、生後3か月を過ぎると、この機能はなくなってしまいます。そのために大きく口を開いておっぱいを吸っていなかった子は、顎を上げて身体を後ろに反っておっぱいを飲もうとします。その時同時に空気を吸ってしまい、口か ら食道、食道から胃、そして腸に空気を入れ込んでしまいます。それが、呑気というお腹がポッコリとしている状態になるのです。
この姿勢はCカーブ(※)を破壊してしまうので、将来成長して、痩せていてもまっすぐに立つと、お腹だけがポッコリとするために余計にダイエットしようとしますがこれは大きな間違いで、姿勢の問題が生じた平背という状態になります。【資料1】
大人になって、様々な問題を起こす唇の形状、そして歯形の成長にも問題を与える指しゃぶり、実は、呼吸と飲み込みのしにくい姿勢が作り上げたストレス解消のための方法だったのです。

Cカーブ:新生児期の背骨の形のこと。生後間もない赤ちゃんを横から見ると、英文字の「C」のように背中が丸まっている。
【資料2】低位舌

一度、最大に口を開いて声を出し続けてみてください。きっと5 分も持たないと思います。
子どもがずっと泣いているのは、中途半端な口で吸う方を優先した泣き方、つまり過呼吸の状態で泣いているからなのです。呼吸器系の異常は、この初めの口の開き方で大きく違います。
指しゃぶりをしている子ども達の多くは、大きく口を開いて泣くことすら許されていない子ども達です。子どもは大きく口を開くことで声を出し、いらないものを吐いて排泄するという機能を作り上げますが、大きく口を開いておっぱいを飲まないことがこの指しゃぶりという代償態癖を作り上げてしまうのです。
この問題は大きく口を開いてものどちんこ(口蓋垂)が見えない低位舌、低位咬合、そして口腔内ボリュームの成長が貯められてしまった歯並びにもなっていくのです。【資料2】

指しゃぶりは、呼吸の異常を招いている姿勢で今まで抱かれて、そして泣いているにもかかわらず泣くという大事な仕事を止められてしまい、代償補正という他の仕事に変えてしまったための動作で、呼吸をするためにはどうしても必要な癖なのです。今まで対処法が対症療法でしかなかったのがよくわかりますね。
この癖をやめさせるのに、口の中に指を入れると上顎に刺さるような装置、つまりびっくりさせたり、痛みを与えて大きく口を開いて声を出させるという拷問のような装置などが使われてきたのにも訳があるのです。今まで誰も解明できなかったこの指しゃぶり、実は、歯形を変形させるのではなく呼吸がしにくいという病気を形にしていただけなのです。

子ども達の成長にはそれぞれの身体の器官の発育が大きく関係しています。
私達歯科医師はこの問題の解決を歯牙年齢という歯の生え方、口腔という腔の成長を見ていくという重要な診断と方法があるにもかかわらず今まで、成長し病気になった人々の治療に追われていたためにこの問題の重要性を説いてきませんでした。
30年以上ゼロ歳から子ども達の成長を大人になるまで見続けてきた予防医だからこそ、この問題の解決法を成長と呼吸と嚥下の姿勢として捉えることができたのです。姿勢咬合は、姿勢が最も咬合に大きく影響を与えるということを説いている学問でもあるのです。
指しゃぶり一つでも、子ども達の体力ばかりでなく学力にも大きく姿勢が関係していることがわかります。
姿勢の良い不良はいない、つまり姿勢が悪いということは……。
身体の機能と健康に大きく関係している、ひいては態度として現れるのですから、周りとの環境、つまり人間関係にも大きく影響を与えていることになります。

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川邉 研次

川邉 研次

経歴

新橋 未来歯科 院長
姿勢咬合セミナー主幹(25年続く姿勢と噛み合わせの歯科医師向けのセミナー)
Ken'sホワイトニングセミナー主幹

1984年静岡県菊川市にかわべ歯科を開業。2011年新橋に未来歯科開業。
従来の疾患中心型治療ではなく、「細菌単位でのお口の中のリスクを知り、その結果に基づき改善していく」「食事内容の分析・アドバイス」「姿勢指導や、呼吸などのアドバイスによる体質改善」「患者様の未来の目標設定」をコンセプトにした「予防」診療を行う。
歯科医・歯科衛生士向けの各種セミナー等も精力的に行なっている。

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