保育園運営のヒント

社会保険労務士川﨑先生の保育園で役立つ園運営お役立ち情報──第17回 従業員の定着について

社会保険労務士川﨑先生の保育園で役立つ園運営お役立ち情報──第17回 従業員の定着について

2016.11.21

社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング代表の川﨑潤一です。
今回は従業員の定着についてお話ししたいと思います。

人材が定着するためにはどのようなことが必要でしょうか。
定着するための施策は様々ですが、企業によって対策は変わってきます。
定着させるためには、どうしたら定着できるのかを考える前に、どうして定着しないのかという原因を明確にします。
その原因に対して対策を立てて実行し、効果について検証して、再度現状分析をする、と繰り返します。

人が働く理由は様々で、現状分析をします、と企業によっても定着しない理由は異なります。また、時間の経過と共に価値観も変わり、働き続ける理由も変わってきます。
そのため、定期的に定着を図ることについて現状分析し、計画立てて改善活動を実行し続けることが重要です。

それではまず、保育業界の人材についての現状がどのようになっているのか、見ていきましょう。

保育業界の人材不足の現状

保育業界の人材不足について、現状ではどのようになっているでしょうか。
平成27年11月9日厚生労働省作成資料によりますと、保育士の有効求人倍率は全国1.85、東京都5.44となっております。
待機児童解消のため保育園という箱を作っても、そこで働く保育士の人数はかなり不足していることがわかります。
保育士の資格者が足りないというよりは、保育士の資格を取得していても、保育園で働かない・働けない・働きたくないという方も相当数います。

参考:平成27年11月9日 厚生労働省作成 保育士等における現状

では保育士が不足している原因について、考えてみましょう。
厚生労働省が作成した参考資料を見ていくことにします。

参考:平成25年 厚生労働省作成 保育分野における人材不足の現状

 資格取得者の就職先

保育所に就職する人数は約半数の51.7%。次いで、幼稚園などの保育所以外の施設が31.5%。その他が16.8%となっています。約半数が保育所以外の施設で働いています。

保育所以外に就職する理由として考えられることとして最も大きい要因は、企業への就職と異なり、保育園や幼稚園での実習を通し、職業としての向き不向きを考える機会があることです。

実習生といえども、子どもの命を預かる1人としての責任の重さを感じながら、寝る間もなく実習日誌や日案、教材を作成するため、事務作業の多さを体感しています。 特に子どもの命を預かるということについて重く受け止めることで、責任の重さや事故への不安から自分にはできないと感じることが大きいと思います。

また、保育園や幼稚園だけでなく、養護施設や障がい児施設での宿泊実習の中で、福祉の立場としての保育士の役割も学びます。そのような体験をしていく中で、目指す保育士像について考える機会となり、進路に影響を与えることが考えられます。

また、一般企業の方が初任給の提示額が多ければ、悩む学生も多いように思います。

 保育士の勤続年数と離職率

上記1を踏まえた上で入社した方は、どのくらい継続して働いているのでしょうか。
平成27年11月9日 厚生労働省作成資料「保育分野における人材不足の現状②」によりますと、1年未満から5年未満の早期離職が約50%を占めていることが分かります。また、1年未満から10年未満での離職の合計が約80%にも上っています。

短期大学などの養成校を卒業して保育士に就労したとすると、年齢が30代くらいになると離職しているのではないかと思います。

 保育士として就業を希望しない理由

上記2を見ますと、勤続10年以内で退職される方は非常に多いことがわかりました。では、なぜ10年で退職してしまうのでしょうか。

平成25年 厚生労働省作成「保育分野における人材不足の現状」によりますと、保育士職への就業を希望しない理由では、下記のようになっています。

  • 就業継続について………責任の重さ・事故への不安 40%
  • 再就職について………就業時間は希望と合わない 26.5%  ブランクに対する不安 24.9%
  • 働く職場の環境………賃金が希望と合わない 47.5%  休暇が少ない・取りにくい 37%

様々な要素が出てきました。
不安、家庭との両立、賃金や休日などの待遇の改善といった点が原因となっているようです。

なお、上記の就業を希望しない理由が解消された場合、63.6%が保育士への就業を希望しています。
つまり、これらの原因が改善できれば、採用もしやすくなり、定着に繋がるように思います。

採用と定着

採用と定着はセットで考える必要があります。
採用だけを熱心に行なっても、これまでのデータで見たように退職されてしまっては、人手不足は一向に解消されません。
そのため、いかにして採用するかを考える前に、いかにして定着を図るかの検討が先に必要となります。
優先順位としては、まず定着を図るためにどうしたらよいかを考えて、対策を行うこととなります。出血を止めないといくら輸血しても回復はしないのです。

定着ができるようになりますと、採用がしやすくなります。
採用活動は、他社とのコンペのようなものです。人材を獲得するということは、営業活動において契約を取るのと似ていて、他社よりも優位性がないとなかなか勝てません。
定着率が上がるということは、いい意味で理由があるわけです。
「当園はこのような施策があることで、定着率が●%です」といったアピールができるようになるわけです。
そのため、採用よりもまずは定着を図ることが非常に重要となるのです。

従業員を定着をさせるためには、具体的にどのようにしたらよいでしょうか。
次回は、従業員の定着ついてより具体的に考えていきます。

川﨑 潤一

川﨑 潤一

経歴

社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング 代表
株式会社ヒューマンブレークスルー認定ESコンサルタント、全国社会保険調査対策協議会会員

財閥系子会社、医療事務・介護事業会社の人事として、採用・給与計算・労働保険手続きを担当し、2011年4月1日に社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティングを開業。

ハローワークにて「助成金支給申請アドバイザー」として、窓口で支給申請の受理手続き(約700件)、相談・アドバイス、不正受給防止のため事業所への実地調査を行った経験がある。
その勤務経験から、企業に対して現状と今後の展望をヒアリングした上で、最適な助成金の提案・手続きを行っている。

社会保険労務士として、労働社会保険手続き、助成金手続き、就業規則の作成・改定、給与計算、セミナー講師を行う。
その一方で、人事マンの経験を活かし人事コンサルタントとして、採用コンサルティング、従業員満足度(ES)調査・向上コンサルティング、マネジメント能力向上研修(マネージャーMQ)、社会保険調査対策、人事制度構築といった人事コンサルティングにも力を入れている。

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